週末堂

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伊澤商店さんがバンバ広場のイベント、『Thursday Night Fever』を“引退”されてから・・・早一年が経ちました。
昨年の秋、益子陶器市の帰りに立ち寄った際の、もう一方の雄“マルヨシ”店長の少し寂しそうな表情が印象的でした・・・

ところが、今年に入って他のブロガーさんのレポに「バンバ広場で伊澤商店さんの美味しい料理をいただきました」と言った、
何とも嬉しい言葉が載っているではありませんか・・・お店のブログでも告知がされていて、気にならずにはいられません!
イベントではありません。月に二回、今度は“火曜日”にバンバ広場で伊澤商店さんの赤ちょうちんに出会えますが・・・

・・・平日なのに、「週末堂」なのですね・・・あっ、そうか、「週末堂」なのか・・・何て懐かしい響きなんだろう・・・

  今回は(も?)物語風の紹介となりますが、以前のブログに綴った物語を元に作成しましたので、多分に
  わかり辛い部分があると思います。また、いつもながらの長文ですので、文章を飛ばして写真をお楽しみ下さい。







今更3年も前の事を彼是言ったところで、一体何の意味があるのだろう。
そう、3年という歳月は物事を丁度良い具合に“思い出”へと変えてくれる。

あの時、あれほど辛く、切なく、苦しいと感じていた一連の出来事ですら、
今にして思えば驚くほど冷静かつ客観的に判断出来るから本当に不思議だ。
それでいながら、10年前の出来事ほどは記憶の中で風化もされていない。
例えば、当時、ほんの些細な小さな断片にすぎなかったにもかかわらず、
現在でも驚く程鮮明に思い出されるエピソードがあったりもするのだ。

3年とは、良くも悪くも・・・
“思い出”として都合良く解釈(改ざん?)してしまう魔法の期間なのだろうか?

それが、当時の自分にとって、重大で、掛け替えの無い出来事であったとしても・・・


こんな言い訳めいた書き出しで始めなければなければならないのは、
一連の体験が本当は未だに冷静にも客観的にも判断出来ないからであり、
あの時僕の心の奥底に響いた数々の事象が風化されるのが恐いからであり、
驚く程鮮明に思い出されるエピソードが本当に些細な断片でしかない事が
情けなく感じてしまうから・・・いっそ、10年経っていればよかったのに・・・

そう、あの時の記憶が3年と言う魔法の期間によってずたずたにされ、
自分の中で“思い出”に改ざん(解釈?)されるのが耐え難いのだ。

そして、本当にあれからもう3年の歳月が過ぎてしまったのだ。
もう戻る事の出来ない時間、振り返れない場面、それに・・・

あの最後のイニシャルで訪れた場所でのひと時は・・・


全ては3年前に見た映画かドラマのように、
全ては初めから何事も無かったかのように、
僕は・・・毎日の生活を送ってしまっている。

何も振り返らずに・・・何も残そうとせずに・・・


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あの目くるめく9ヶ月間から、既に3年が経っていた。その間、この国の歴史を一変してしまうような大震災をはじめ、
政治、経済、文化の様々な変化を日々の生活と共に経験してきた。そして、この3年で僕個人としての変化も経てきた。
3年前の4月、僕は仕事の関係で生まれ育った栃木県の地を離れた。全く未知の土地で新しいプロジェクトに没頭する毎日。
それまで暮らしていた家族の元を離れ、身一つで転がり込んだアパートと、ほど近くに位置する仕事先とを往復する日々。
それはそれで充実していたのかも知れない。だが、今春の人事異動でこうして再び栃木の地に降り立った瞬間に・・・

そうだ、この心の奥底から湧き上がってくるような熱い感覚・・・懐かしいでは済まされない言葉では言い尽くせない感情は・・・
僕が3年前にどうしても完成させたかった“ジグソーパズル”の・・・そう、“47ピースの花のパズル”を思い出させるのだ・・・


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中間テストも終えて1学期も後半へと差し掛かった5月末、宇都宮の教室への出張を終えた僕は、
その後の業務予定も無く、この日は終業になるのを口実に少し宇都宮の市街地を散策する事にした。
どこかカフェにでも行ってみようか・・・いや、あれから3年、移り変わりの激しい都市に於いてはもう・・・
僕が情熱を降り注いだ頃の姿は・・・そうだ、“宇都宮の中心”だったら決して無くならない場所が・・・


宇都宮二荒山神社

あれは確か「ナ」のイニシャルの花の時だ・・・よりによって“ハニー”からメッセージを貰うなんて・・・
あのメッセージを手掛かりに、3年前のあの日も今くらいの時間にこの大鳥居の下に立っていたっけ。
当時は大鳥居の横にクレーンのアームが伸びていたけれど・・・こんなマンションが聳え立つとは・・・


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そして、あの日もこうして石段を上って・・・何に祈っていたっけ・・・イニシャルの完成と・・・

そう、“彼”に出会う事・・・一時たりともぶれる事無く突き進んでいた。今の僕は何に突き進む?


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ちょっとノスタルジックな気分になって石段を下りると、広場の入り口付近にテントが設置されていた。
その光景を目の当たりにした僕は思わず小さな声を漏らしてしまった。だって、感傷に浸りたかったのは
確かだけれど、これじゃあ本当にあの日の再現ではないか・・・偶然とは言え、これは夢か・・・それとも・・・

“Thursday”ならぬ・・・“Tuesday” Night Fever・・・3年前のあの熱い夜が瞼の裏に蘇ってくるじゃないか。


テントでは二人の男性がしきりに準備に没頭している。ケースから食材を出し、テントの周りに椅子を並べ、
木炭に火を熾し、そして、一人が手にした黒板にメニューを書き入れてテントの前に置いた・・・これはっ!!


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週末堂


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一瞬、どこかで聞いた事のあるフレーズだと暫く記憶の奥底を辿り・・・突然僕はハッと我に帰った。

「週末堂」・・・僕のノスタルジックな(しかし、決して感傷的では済まされない)記憶の彼方への行き先は、
3年前の・・・「Elvis Cafe」では、無い。それから更に2年も前の・・・つまり、5年前の2008年の初春・・・

あのCindyが追い続けていた人物、Arnoldが綴っていたブログに出てくる不定期の店の名前なのだ!!


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確か、「週末堂」の主人はその後程無くして宇都宮の郊外に自分の店を構えて、自家農園の新鮮な野菜を
メインに据えた極上の料理とスウィーツで近隣はおろか、遠方からも沢山のファンを持つ人気店になって
現在に至ると、風の噂で耳にした事はあったが・・・残念ながら僕のイニシャルに載る機会は無かった。

そして、目の前に並んだ見るからに新鮮で瑞々しいトマトを眺めながら、その店に間違い無いと僕は確信した。


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それにしても、最初から気になっていたのだが・・・ワインのボトルは納得できるにしても・・・


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テーブルに無造作に置かれた缶ビール(しかも、“オリオンビール”だなんて!)に・・・


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旨そうな煙の立ち上る網に載っているのは・・・砂肝じゃないか!!

テントの端に吊り下げられた“赤提灯”には“にこみ”の文字が煌々と灯っているし・・・
これではまるで、仕事帰りのサラリーマンが立ち寄る屋台の居酒屋か何かでは・・・


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なぁ、鳩、教えてくれ。確かArnoldのブログで紹介されていた「週末堂」は、“例の洋菓子屋”が
“カフェ”を名乗っていた頃に店を出していた際、イタリアンの料理を出していなかったっけ?

または、オマエも僕と同様、大空に飛び立っていてる間に何かが変わってしまったかな?


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狐にでも化かされているのだろうか・・・それとも、3年の月日は僕を浦島太郎にしてしまったのかしら・・・

そうこうする間にすっかり準備も終わり、主人に促されるままに、僕はテントの正面の席に着いた。
ただ、一つだけ、Arnoldのブログと一致する部分があった。これまで全く面識が無く初対面だったが、
彼のブログに綴られていた通り、一見、強持てな印象の主人の、なんて気さくで優しい事だろうか!

席に着く瞬間まで感じていた不安や緊張は、主人の最初の眼差しと挨拶で何処かに消えてしまった。

  紛らわしいですが、Lawrenceと店長さんは初対面ではありません。物語の設定として捉えてください。


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豚スネ肉と白インゲンの白ワイン煮込み

メニューの中で少しでも洋風な料理をチョイスしたのは、彼のブログへのオマージュと・・・
そして、変化し続ける現状への、僕なりのささやかな抵抗とでも言っておこうかな・・・

3年前の僕の生活を決定付けた根幹とも言える、唯一残された彼のブログの世界に・・・
偶然とは言え目の当たりにしてしまったのだから・・・これってやっぱり、感傷的だよなぁ・・・

そして、豚スネ肉の煮込みだから付け合せも洋風に・・・バゲットもお願いします!


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・・・って、網で“トースト”ですか・・・Arnoldが見たら何て言うのだろうか?

・・・また、茶目っ気たっぷりに・・・“わぁ~~~!!!網焼きバゲットです~~!! (≧∇≦)b”
・・・こんな感じに綴るのだろうか・・・それをCindyが見たら、一体どう思うのだろうか・・・


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豚スネ肉の煮込みとバゲットのツーショット・・・

ロケーションは異なるとは言え、これぞ“2008年初春”まで存続したという、彼の「週末堂」のビジュアル!!


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そして、ハラハラと箸で簡単に崩れ裂かれていく豚スネ肉の塊をひと口頬張り、僕は確信した。

柔らかく煮込まれた豚スネ肉の、かみ締める(と言うか舌先で押し潰す)毎に、心地良い弾力と共に
口の中いっぱいに広がるジューシーな肉の旨みと、溢れる肉汁を絶妙に抑える白ワインからなる
ほど良い酸味とコクが溶け合った煮込みのソースのバランスの取れた味わいが肉に絡んで
旨みが更に倍増して押し寄せてくるようだ・・・勿論、カリカリに焼かれたバゲットの気泡に
たっぷりと絡めて肉と一緒に口の中に放り込んでいたのは言うまでもないだろう・・・

最寄の足利の駅に停めた車を心配してワインを控えてしまったが・・・代行にすればと後悔しても・・・


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帰り際に、思い切って主人に「週末堂」の事を切り出してみると・・・葉書大のフライヤーを差し出して言った。


  もし、今度の土日に時間があったら、是非ともウチの店のOpen記念のイベントに来てよ!
  実は、君が言っていた“洋菓子屋”も参加するんだ・・・そのArnoldってブロガーの事も
  何か知っているかもしれないし・・・そうそう、他にも当時のお店が参加するんだよ!!



そう言って、主人は週末のイベントの出店者一覧の部分を指差した・・・店名が列記された中には・・・


・・・暫く眺めていた後、すっかり空になった容器と皿を残して僕はテントを後にした。
・・・今宵、僕が経験した、彼(Arnold)の知らない・・・2013年の「週末堂」から・・・


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テントで売っていたカルピスバターと大納言小豆のパンを頬張りながら・・・
イベントのフライヤーに記された店名を、僕は無言で見つめていた・・・

そして、おもむろに手帳を取り出し、カレンダーのページを開いた。
6/2(日)の欄にボールペンで、ひと言書き込み、手帳を閉じた。


伊澤商店まつり・・・「週末堂」と3年越しの僕の終着駅、と・・・


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伊澤商店
http://izawasho-ten.blog.so-net.ne.jp/
※「週末堂」はバンバ広場で毎月第二・第四火曜日に開催されるとの事です。


次回のLawrence日記は物語後編の・・・(遥か昔って感じもしますが)「伊澤商店まつり」レポです!!
また、次回の最後にLawrenceからのお知らせがありますので、よろしくお願いします。 m(_ _)m
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by mr-lawrence | 2013-06-27 22:31 | 街歩き&イベント | Comments(0)


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